最高位戦ペアマッチのススメ

最高位戦ペアマッチ2018に行ってきました。一緒に行ってくれる方がいない!と二の足を踏んでいる方がいたら、どうにかして相方を見つけましょう。その努力に見合った価値はある大会だと思います。
以下は感想のような、次回参加してみたいと思っている方や、次回参加する時に自分が読み返して参考になりそうなことをメモしておきます。

ペアマッチはなぜかコスプレが推奨されている大会です。ウォーリーにバービー、メイドに執事、和服にセクシーアーミー、などなどといった装いのみなさまが真面目に麻雀を打っている姿はかなりシュールです。ベストドレッサー賞を狙うならインパクトのあるコスプレでしょうね。なお、コスプレをしてくると特典としてペットボトルの飲み物が1本もらえます。
今回個人的にツボだったのは中里春奈さんと日向藍子さんのこのコスチュームでしょうか。写真ではこの際どさが伝わりきらないのが残念。

コスプレをするかどうかは別としても、男性もちょっといい格好をしてはいかが。石橋伸洋さんの緑がかったタキシードや、園田賢さんのスリーピースはよく似合っていました。まあ、普段着で来ても別に浮いたりはしませんのでご心配なく。

受付はどちらか一人が並べばOKです。受付では名札、卓番号・対戦相手・ルールなどを書いた紙、何切るの問題用紙と解答用紙、特典(個人協賛など、該当者の方のみ)を受け取ります。人数が多い大会なので、一々場決めをせずに済むような仕組みになっています。同卓者も全員書いてあるので、今日誰と打つのか最初に全部分かります。

点数計算がほとんどできない方もちらほらいらっしゃいますが、最高位戦の選手がたくさん運営で立っていますし、大体どの卓にもプロまたはプロ級の方がいるので心配いりません。気になる方は最初に「点数がよく分からないので」と一言断られるとお互い気が楽だと思います。小生が同卓した方は、ガンガンあがってバビィに競り勝ってトップを取っておられました。

全部で4回戦で、それぞれ開始前にスポンサーのみなさまからのご挨拶があります。お祭りとあってそんなに退屈な挨拶をする方はいらっしゃいません。打っている間も司会のお二人(今回は浅見真紀さんと松田麻矢さん)が残り時間を言ったり著名人の方に話しかけたりしているので割合にぎやかです。なお、各回ごとに先着10名に跳満賞があります。跳満以上なので、倍満でも三倍満でも該当します。役満は別に役満賞が出ます。該当するあがりをしたら、ためらわず近くの運営さんに声をかけましょう。45分打ち切りで、45分が過ぎた局で終了です。したがって、北家は南場の親が回ってこない場合もままあります。

受付でもらった何切る問題の解答は3回戦開始時に各卓から回収され、4回戦開始前に答え合わせと景品当選者の発表があります。今回は全問正解が複数いたため、抽選の結果ゆうせ〜さんががカニをもらっていました。弟のアサピンさんは加藤哲郎さんと組んで優勝していましたし、さすがは持ってる兄弟ですな。

小生の成績はふるいませんでしたが、勝った人の分だけ負けた人もいるのが麻雀ですから、勝っても負けても楽しむに限ります。これだけお祭りっぽい雰囲気の中で麻雀を打てるのはペアマッチだけでしょうから、お祭りに参加ついでに麻雀を打っているくらいのつもりでもいいのかも。

写真は相手の方に許可をいただいてから撮るというルールですが、参加しているプロの方ならたいていOKをいただけます。色紙を持参している方もいらっしゃいました。参加者がとにかく多い大会なので、お話したい方がいたら積極的にいきましょう。小生はお話したかった方とはだいたいお話できましたが、西嶋千春女流最高位さまとはお話しそびれました。開場から開会式までにちょっと時間があるので、ここを有効利用するのは有力だと思います。
また、会場は喫煙と禁煙両方のスペースを使います。喫煙スペースでも対局中は吸えませんが、対局の間は吸えます。従って、たばこが苦手な方はその点覚悟が必要です。マスクとのど飴はお持ちになったほうがいいでしょう。個人的にはこの種の大会は全面禁煙にしてほしいところですが、喫煙者の割合が高いので難しいでしょうね。
トイレはとても混雑します。水分の摂取はほどほどにして、早めに対局が終わった場合はとりあえず先にトイレに行くことをおすすめします。

100組200人が参加するという大規模な大会を円滑に進めるため、最高位戦の方々はほんとにたくさん運営として働いてくださっていました。司会のお二人、特に浅見さんの巧みな話し方が印象的でした。浅見さんの実況はコバミサさん、松嶋桃やん、日向藍子さんの実況と並んで好きなので、今回お話できて本当に嬉しかったです。「そう言っていただけるとがんばれます」ということばには、通り一遍でない響きがあった…と思います。
司会は目立ちますが、コスプレで立ちっぱなし、自分も打ちたいのにずっと人が打っているのを気遣いながら見続けている、たくさんの運営の方々の働きがあってのペアマッチであることも、出てみて感じました。以前小川町レインボーでお世話になった浜崎卓哉さんと久々にお話できたのも嬉しかったなあ。運営をしている浜崎さんは麻雀打っている時よりも楽しそうな気がします。

真剣そのものの競技麻雀もいいですが、お楽しみ要素満載の大会もあることで、麻雀の楽しみ方が広がりますね。気になってみた方はぜひぜひ次回参加してみましょう。申込期間が案外短いので、そこもご注意を!

松嶋桃『京大卒雀士「戦わない」受験勉強法』を読む

日本プロ麻雀協会のチャンピオンロードに出たついでに、同卓した松嶋桃プロから『京大卒雀士「戦わない」受験勉強法』を直接購入しました。
で、さっそく読んでみました。受験勉強法の本ですが、考え方は資格試験全般に応用できますね。ある資格試験を受けようかどうか考えているところなので、受けると決めたらこの考え方をアレンジして使ってみようと思います。
特に、第1章「「戦わない」受験勉強法とは何か」がいいですね。受験勉強法と言いつつ、これは松嶋流の楽しく生きる方法でもあります。ここに書いてある5原則は、何となく毎日楽しくないと感じている人に目を通してほしいです。日常を見直すヒントが得られると思います。個人的には1番目に挙げられている「ゴールを見失わない」が難しいなと日々感じています。あとの4つはある程度実践できている、かな。その結果、まあまあ楽しく生きています。
第2章「やりたいことがない人こそ一流大学を目指しましょう」は、受験に何となく不安を感じている人に対するいい励ましが詰まっています。後半に書かれている、授業から取り残された時のリカバリー方法は小生も似たようなことをやったので結構オススメできます。松嶋さんと多少お話ししたことがある方なら、松嶋さんのあの穏やかな雰囲気がどのように培われたのか分かってなお楽しい章です。
第3章、第4章のセンター試験と二次試験対策は、かなり具体的にやり方が書いてあります。この数学の学習法は受験生の時に試してみたかった! 英語は長文を読む前に問題を見るのがいいってのはいくら分かっていてもできませんでした。人にはどうにもならない癖があるので、無理に合わせようとしないことも大切かも。受験勉強法と呼ばれる本であれば似たようなことは書かれていますが、ここまで読んできて面白いと感じた人が、このやり方を信じて勉強を続ければ合格に近づくでしょう。
第5章は麻雀好きに対するオマケみたいな章です。麻雀好きなら楽しんで読めるでしょうが、そうでない受験生には謎の章かも。合格してから麻雀覚えて読んでみるのが吉かな。

小生も今を遡ること二十年以上前、京都大学(文学部)を受験したのです。もちろん不合格でしたが、直前の成績は倍満ツモ条件くらいまでは行っていました。そこそこ真剣に受験勉強には取り組んだので、読んでいるうちにその時のことを思い出してきました。当時すでに麻雀のルールはある程度分かっていたので、この本を見せたら喜んで読んでもう少し効率よく学習し、満貫ツモ条件くらいで入試に臨めたかもしれません。
松嶋さんは割とまーちゃお下北沢に来てくれるので、何度か打ったり話したりしたことがあります。帯にも「京大卒美人プロ雀士」と書いてあるとおり確かに見た目も年齢不詳の(というよりいつまでたっても高校生っぽい)美しさがありますが、松嶋さんの真の魅力は柔らかい雰囲気と機転にあります。柔らかい雰囲気はひとと争うのが苦手で、できるだけ穏やかにものごとに向かい合う姿勢から生まれるのでしょう。いるだけで場が和む座敷わらしみたいなところがあります。そこに賢さが加わることで、機転が生まれます。様々な麻雀番組の司会をこなせるのも、この力があってこそです。

勝手な推測ですが、松嶋さんは決して苦労なしに生きてきた方ではないと思うのです。この本の最後にも書いてありますが、間違ってロースクール行っちゃった時には結構しんどい思いをされたのではないでしょうか。小生もムダに大学院に行き、学費その他で高級外車を買えるくらいの借金をこさえてしまった苦い思い出があるので、そう思うのかもしれません。そのような苦労を経て、でもひねくれず、朗らかな松嶋さんでいる。この本の「おわりに」にはそんな松嶋さんだから書ける温かさがあります。
世に結構いるはずの麻雀好きの高校生に、この本が広く読まれるといいな。

渡辺洋香のサービス精神

渡辺洋香さんは最高位戦日本プロ麻雀協会に所属しているプロ雀士である。プロになって20年ということで、昨年は所属団体から表彰を受けていた。かつては倉田真由美さんの漫画『だめんず・うぉ〜か〜』にヨーコ会長の名前で登場していたので、麻雀を打たない人でもご存じの方は多いだろう。その証拠に、全く麻雀に興味がない家人もヨーコ会長のことは知っていた。

ヨーコ会長は日本プロ麻雀協会の杉村えみさんと共同でフェアリーという雀荘を新宿で経営している。小生はノーレートの雀荘にしか行かないと家人と約束しているので残念ながら行ったことはないが、行ったひとみんなが絶賛している。

そんなヨーコ会長がノーレートのお店に来る! というので、小生はまだ小川町にあった頃のオクタゴンに行ったことがある。同卓かなって起家に座ると、ヨーコ会長が下家に座った。あとのお二人は年配の男性で、ヨーコ会長とは何度か打ったことがある方のようだった。

東発、ヨーコ会長が2600を出上がる。年配の男性が5000点棒と100点棒をヨーコ会長に差し出すと、ヨーコ会長は
「最初は1000点棒で払った方がいいわよ」
と、出す点棒の変更を指示した。細かいことだけれど、これは同じことをトッププロの方が言っているのを聞いたことがある。きっとフェアリーでも同じことを言っているのだろう。フェアリーが絶賛される理由がちょっと分かったような気がした。

打ちながら何となくヨーコ会長の顔をちらちら見る。うーん、ほんとに綺麗な方だ。単に見た目が美しいというだけなら他にもたくさんいるけれど、オーラが違う。会話の端々に見える、気遣いとサービス精神はなかなか真似できない。

感心しているうちにオーラスに突入した。小生はほぼ原点のままの2着。ヨーコ会長が他のお二人から点棒をかき集めて結構抜けたトップである。配牌もよくないし、親は中張牌から適当に切っている。ノーテンっぽいな、このまま2着でいいやと思って切った四枚目の發に、上家の親から「ロン」の声。
「げっ、国士じゃん」とヨーコ会長。

一九字牌は全く余っていなかったとはいえ、すでに十巡目。上がりに向かっていないなら当然ケアすべきところで、間抜けな放銃だ。

小生のせいでヨーコ会長はトップを取り損ねてしまった。悪いことしちゃったなと思っていたら、意外なことばが飛び込んできた。
「役満放銃は厄払いだから!」
え? と小生が驚いていると、役満放銃すればもう悪いことなんて起きないから、とさらに慰めてくれた。トップを間抜けな同卓者のおかげでフイにして、冗談交じりに「何打ってんのよ」くらい言ったっていいところだ。実際、そういうことを言うゲストプロを何度も見ているし、相手次第ではそういうことを言ったっていいと思う。しかし、ヨーコ会長のことばはなんと優しいことか。小生はいっぺんにヨーコ会長のファンになってしまった。

いったん卓を外れたヨーコ会長に、ツイッターをいつも見てます、と挨拶する。
「都知事選、投票する人決めた?」(そういう時期の話なのだ)
はい。多分ヨーコ会長と同じひとです。
「そう? 嬉しい! 私はそんなに政治に興味があるわけじゃないんだけれど、今の状況は本当に危険だと思うの。麻雀の世界にはあまりこういうことに興味がない人が多いみたいだけどね…」

ヨーコ会長のツイートは政治や社会に関するものも多い。客商売をしている人はこの種のツイートを避ける方が多いが、ヨーコ会長はかなりはっきりとご自分の考えを表明している。ツイッターを通じてご自分の政治や社会に関する見方をはっきり表明しているのは、小生が知る限りヨーコ会長と麻将連合の高見沢さんだけだ。ヨーコ会長の見方が常に正しいかどうかは分からない(そもそも、常に正しい人間などいるだろうか)。しかし、気遣いの人ヨーコ会長は同時に勇気の人でもある。気遣いと勇気の底に、深い愛がある。

おっと、そういえばヨーコ会長にお願いがあるのだった。
あのう、この本にサインを…
「あーっ、懐かしい! 古本で見つけたの? いいのいいの。これ、もう本屋さんで売ってないのよね。日付入れましょうか?」
かくして、小生はヨーコ会長がかつて出されたヘアヌード写真集『服を着させて下さい。』(アスペクト)にサインをいただいた。
ぼく、この表4の写真が好きなんです。浴衣着てる…
「ああ、これね。この時私マジ泣きしてたの」
え、なんでですか。
「恥ずかしくて…おかしいわよね。うふふ」
いたずらっぽく笑うヨーコ会長の横顔は、少女そのものだった。

ばかになるには遅すぎる

小生が時々打っているまーちゃお下北沢には、時折麻将連合の下出和洋さんがいる。下出さんは最高位戦クラシックを制覇したこともある実力者で、天鳳でもよく打っている。天鳳では鳳凰卓から落ちたり復帰したりを繰り返しているようで結構苦戦しておられるようだが、下出さんが苦戦するって鳳凰卓の人たちはどれだけ強いのだろう。小生に無縁な世界であることだけは間違いない。

下出さんはたまにブログを書いている。リンクはこちら。現在は「しもで先生ができるまで」と題して、私の履歴書のようなことを書いている。今でこそ飄々とした雰囲気を漂わせる下出さんだが、麻雀に取り憑かれて結構色々ある人生を歩んでこられたことがうかがえる。一度は麻雀から離れた方と天鳳で再会することもあるそうで、そんな再会はさぞ味わい深いものがあろう。

さて、そんな下出さんと同卓して、四方山話をしていた時のことである。天鳳で以前の仲間と再会されたりするんですってね、と聞いたら、こんなことを言ってくれた。

結局ねぇ、みんな麻雀が好きなんですよ。仕事が忙しくなって離れたりした人でも、若い頃にバカになって麻雀打ったことある人は強いですよ。麻雀に帰ってくるんですよ。

下出さんのことばを聞いて、小生は思った。
ああ、小生はバカになるには遅すぎる。
もちろん、小生はプロを目指しているわけではない。点数申告を間違えず、テンポよく打てる、そういうレベルに何とか達したいと思いながら麻雀を打ち、何年経っても到達できない。それでそこそこ楽しいからいいけれど、そんな小生がいくら打ってみたところでバカになって打ったことあるひとには勝てないよなあ。

でもまあ、それでいいか。